尾崎放哉 編者:池内紀『尾崎放哉句集』2007 岩波書店
「咳をしても一人」で有名な尾崎放哉の句集を読んだ。
目に映った景色やふとよぎった感情をぽつりとつぶやいた、という感じの句が多くて、Xのタイムラインを眺めるような感覚で楽しく読めた。
直感的に好きだなと思った句を感想と一緒に書いておく。
ふとん積み上げて朝を掃き出す
敷布団をたたみ、縁側を掃き掃除をしているような光景が浮かんでくる。縁側のある家に住んだことはないのだけど、サザエさんでよく登場するのを小さいころから見ていたからか、何となくノスタルジーを感じた。
つくづく淋しい我が影よ動かして見る
一人でいるときに、意味もなくゆれてみたり手を振ってみたりすることがあるのだが、この句もそんな感じだなと思った。頭をひょこひょこ動かしながら影を眺めている感じがあって、もの寂しさとおどけた感じが伝わってくる。
ねそべつて書いて居る手紙を鶏に覗かれる
絵はがきにでもしたい情景だなと思った。すぐ近くに文机があるのに座らずに寝っ転がって書いてそう。
何も忘れた気で夏帽をかぶつて
明るい句なのだけど、切ない気持ちになった。「忘れた気で」という表現が良くて、本当に忘れたわけではなくて、心の片隅に澱のように沈んでいるのを見て見ぬふりした何か、の存在を感じた。
それは楽しかった記憶かもしれないし、将来への不安かもしれないし、夏休みの宿題かもしれない。
友の夏帽が新らしい海に行かうか
夏帽シリーズ。服を新調するとお出かけをしたくなる気持ちは分かる。友人の新しい帽子を見て海に一緒に行こうと誘えるのは、何だかいい関係性だなと思った。
犬をかかへたわが肌には毛が無い
あえて自分の肌に毛が生えていないという気づきを書くことで、犬の全身にふわふわの毛が生えていることを感じさせるテクニカルな句だと思った。
犬よちぎれる程尾をふつてくれる
「ふつてくれる」という表現に愛情を感じる。ニコニコした顔で見上げながらしっぽを振っている犬と、それを優しいまなざしで眺める人の光景が浮かんだ。
すばらしい乳房だ蚊が居る
カメラが急激にズームインする2コマ漫画みたいな疾走感がクセになった。
すばらしい乳房だ…(胸を漫然と眺める)→蚊が居る!(蚊のいる胸元ドアップ集中線)みたいな
洗いものがまだ一つ残つて居つたは
共感しすぎる。よくあるよねこういうの。ちょっと忌々しく思ってる感じが伝わってくる。
そうめん煮すぎて団子にしても喰へる
意味わからんけど好き。