amslの日記

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【読書感想】『話し上手 聞き上手』

遠藤周作編『話し上手 聞き上手』新潮社 1986

本を読んだきっかけ

齋藤孝著『質問力』にて紹介されていたから。

人と会話が続かないのを何とかしたい!と常々思っているので、
コミュニケーション関係の本を最近あさるようになりました。

本を手に入れた方法

図書館。

内容

14の対談が収録されている本。 大岡昇平芥川比呂志とか、古今亭志ん生と内田百閒とか、近代の有名な文化人たちの対談がのっています。

恋愛の話、エロの話、故人を懐かしむ話、批評の話、対談相手の人となりに迫った話など、ジャンルは色々。

感想

前書き

まず、前書きが一番分かりやすく実用的だったので、そこの紹介をします。

・対談相手の得意とする趣味の教えを乞われると相手は心を開く

・文学や学問の対談である場合は、自分の意見も必ず述べる。
意見が異なっても、お互いの話を呼応させることこそ意味がある。

という内容でした。趣味の話は特に使えそうなので、初対面の人にはまず「ご趣味は?」と話を振ってみようと思います。

全体的なこと

知っている人の対談はとても面白く読めました。その人の考えていることの意外な部分が知れたりとか、発見もありました。

ただ、知らない人同士の対談はあまり楽しめませんでした。
当人たちに対する前知識がないので、何のことについて話しているのかさっぱりで。。
ある程度の前知識を持ってから本を読んだ方がいいですね。

話のテンポや質問の仕方など、参考になる部分は多かったです。

特によかった対談

吉田茂徳川夢声「宰相多いに語る」pp.101~114

初対面の対談だと冒頭に書いてあったのですが、とても盛り上がっていてすごい。
探偵小説の話から海外の話、そこから年齢の話、芸術の話…と、相手の言葉尻から話題を広げていっていて、
それでいてかなり深いというか、本音のような話ができているのでいいなと思いました。

徳川夢声さんはよく相手について調べているし、けさ聴いたラジオ番組の話もしていて、話題収集に事欠かない人なんだろうなと思いました。

『質問力』にも、相手について調べてから質問を投げかけることが大事、とあったので見習いたいです。
あと、吉田茂はとても頭がいいんだろうなと思える会話でした。造詣が深くてユーモアがある感じ。

例えば、サンフランシスコ講和会議のエピソード。「大いに吉田首相らしい」と評された、自身のペンで署名をしたエピソードについて、
実は自分のペンでサインしたわけではなく、前から頼まれたペンを使っただけですといって笑ったり、日本語で演説をしたことを
「やってるあいだに、バカげちゃってね」と言ったり(もともと英語で話すつもりだったが、日本語でやれと言われてしぶしぶ従ったらしい)

本音っぽい会話でかつ茶目っ気があっていいなと思いました。

時代を感じる会話もありました。
有料道路を作るがよかろうとか、松方コレクションをフランスから日本に送ってくれとか。
松方コレクションてことは、今の国立西洋美術館の始まりかしら、と思ったり。

美術に関する話が多かったので、美術好きとしてはとても楽しく読めました。
夢声さんの、日本人の芸術に対する感性としてのコメントが好きです。

  • 『聴いてるその時は、ほとんど批判力は働かないんでしょう。芸術というものに対して、拝むような気持ちで傾倒して、陶酔して、渇仰して……、まことにいい聴衆なんですね』」

  • 「『日本人には、島国根性みたいなヘンにひねくれたところがある一面、最高のものに対して絶対に帰依したいという気があるんですよね。ピカソ展やマチス展に、わかってもわからなくてもワイワイ集まる。画家たちがあれを真似してかくにはいけないが、最高のものにあこがれて、みんなが高い入場料を払って見にいくというのは、すなおないい心がけですね』」

少し上から目線かな、とも思いますが。
私自身もこのタイプなので、自分が面白いとかありがたいと思ったものは素直に受け止めていきたいと思います。
アートの業界の振興のためにはお金も不可欠だと思いますので、バンバンお金を落としていきたいですね笑

司馬遼太郎山崎正和「日本人と京都」pp. 145~158

京都について語っている対談。2人の分析がとても面白いです。
京都は批評の街である、とか純粋な褒め言葉が「よろしなあ」くらいしかなく、褒めていても皮肉が入る、とか。
歴史的背景も踏まえて語られているので、日本史好きにもいいです。司馬遼太郎だし。
千枚漬けは輸出用、というのが少しショックでした。美味しいのに。