今月読んだ本:3冊
ジャンル:音楽×2 エッセイ×1
エッセイも読んだきっかけは音楽だったので、今月は音楽関係の本ばかり読んでいたことになった。
『南仏プロヴァンスの12か月』
著:ピーター・メイル 訳:池 央耿 1996 河出書房新社
プロヴァンスに移住したイギリス人著者のエッセイ。
プロヴァンス地域がテーマの曲を演奏したり聴いたりしたので、どんな地域か知りたくなり読んでみた。
自然豊かで、人々はおおらかで美味しい田舎料理とお酒が好きで、寒暖差が激しいが、四季の移り変わりを強烈に感じられる地域であるということが分かった。
ミストラルと呼ばれるこの地域特有の激しい嵐が季節問わず起こるらしく、極端な気候で定住するのは大変そうと思った。
『ミュージック・ヒストリオグラフィー ~どうしてこうなった?音楽の歴史~』
著:松本 直美 2023 ヤマハミュージックエンターテイメント
学校の授業で習う音楽史はどのような経緯があって今の内容になったのか、について紹介した本。
- 後世になってから「この曲は重要だ」と解釈されたもので音楽史が構成される、とか
- 作曲家個人の天才性に注目されがちだったので、歴史上の出来事と関連して論じられることはほぼない(学校の音楽室で作曲家の肖像画が飾られていることから、作曲家個人に注目する傾向がみえる)とか
- 作曲家に偏っていて演奏家はほとんど歴史に名を残していない、とか
確かにな~と面白く読めた。
曲を演奏するとは、聴衆が演奏を通じて作曲家の意思に触れることと思っていたので、作曲家の死後、どう受容されてきたかは知る意味がないと思っていた。
ただ、この本を読んで、聴き方や社会情勢、環境も時代によって違うのだし、作曲家自身も何度も改稿していて初版が王道で正義とも限らないしで、作曲家の意図通り忠実に演奏することは現代では難しいのだなと考えを改めた。どのようにその曲が愛されてきたか?について知り、その文脈をふまえて自分なりの演奏を作っていくのでもいいのかも、と思った。
本の中で紹介されていたギヨーム・ド・マショー《私の終わりは私の始まり》という作品に興味を持った。
第一歌手が歌う旋律を第二歌手が逆から歌い、第3歌手は前半の旋律を後半では逆で歌うらしい。ややこしい!14世紀に作曲された、対位法(音楽の横の流れで発生する関係性について規定する理論)に優れた曲として紹介されていた。
『日本のクラシック音楽は歪んでいる 12の批判的考察』
著:森本恭正 2024 光文社
日本のクラシック受容について批判した本。
言葉が強いわりに根拠がうすく、同意しかねる見解が多かった。歴史について触れているのに参考文献をのせないのは、ちょっとね。
著者が作曲者・指揮者だからか、音楽的な表現について論じている部分は参考になったのでそこだけ要約して紹介。
モーツァルト等、古典の譜面でときどき出てくる装飾の16分音符について
オリジナルの装飾をしてほしくない部分は最初から装飾音として16分音符を表記しており、逆に言えば、装飾音として書かれていない16分音符は、自由に装飾されることを想定しているらしい。
もし本当なら結構自由な演奏を認められている感じがして、面白いなと思った。
音楽のノリ感をどうやって出すか
1拍目、3拍目よりも2拍目、4拍目に主軸をおいて演奏すると演奏に躍動感(スウィング感)が出ていい感じになるという話。
メトロノームを裏拍で鳴らして練習したらいい感じにスウィングできるようになった経験があるので、これはそうかも、と思った。
テンポの揺らし方
メトロノームにあわせて演奏する→メトロノームをOFFにして演奏する
これを繰り返すことで、
を獲得でき、自由でありながら戻るべき時に元に戻ってこれるテンポ感を獲得できるらしい。練習に取り入れてみたい。
歌っている感をどう出すか
フレーズの分け方は喋りの区切りの分け方と同じと考えて、歌がついている想定でどう区切るかを考える。
- Happy / Birth day to You と歌うか Happy Birth day / to You と歌うか。
- 発音のニュアンス「はーぴばー」と伸ばすか「はっぴばー」と一瞬音が遮断されるか
- 16分音符は等価ではなくアクセントや長さにばらつきがある。どのように音を奏でれば棒読みでなく伝わるかを考える
このあたりを意識しながら演奏すると「歌う」ような演奏ができる、という話だった。
歌うように演奏する、は永遠の課題なので参考にして練習したいと思う。